Artが好きなコーヒー屋

文化の秋①
先日の休日は、子どもを幼稚園から迎えた降園後に家族で福岡市美術館へ行ってきました。
コレクション展示室がリニューアルされ、以前にも増して作品一点一点とじっくり向き合える空間に生まれ変わっていました。
久しく足を運ばれていない方には、ぜひおすすめです。
私はアートが好きで、作品を所有することは単に「インテリアを飾る」「資産を持つ」以上の価値があると感じています。
それは、住まう人の心理や日々の暮らしに深い変化をもたらしてくれる、かけがえのない体験です。
「そうは言っても、アートってお高いんでしょ?」とよく聞かれます。
いいえ、実は版画などであれば1万円ほどで手に入る魅力的な作品もたくさんあります。
まずは直感で「あ、いいな」と心が動いた作品を、生活にひとつ迎えてみてはいかがでしょうか。
文化の秋②
アートが好きなコーヒー屋です。
数年前にもアートについて投稿していましたが、新たな知識や発見がたくさん増えたので、今回「シーズン2」をスタートします。お時間のあるときに、ゆったりお付き合いいただけたら嬉しいです。
僕のアートの先生は、ギャラリーモリタの森田さん。
今回も森田さんの言葉や教えをお借りしながら、僕なりの視点で綴っていきます。
最近読んだ文化庁の資料によると、世界のアート市場は「一部の超高価格帯が主導し緩やかに回復」、日本の市場は「アジア圏からの注目度が高まり着実に拡大」という傾向を見せているそうです。
そんな動きを踏まえつつ、今回は〈僕が思うアートの選び方・買い方〉を3つ整理してみました。
① 好きで買う
ー 市場価値に関係なく、心が動いて予算内であれば迷わず買います。
② 資産として買う
ー 国内だけでなくグローバルマーケットで評価されているかを調べます。(…が、桁違いの金額なので実際には買えません笑)
③「未来の草間彌生」を探して買う
ー これぞ現代アートの醍醐味です。美術館に所蔵されているか、取扱ギャラリーが海外とネットワークを持っているか、どんなコレクターが支持しているかなどを調べた上で、予算内であれば勝負して買います。
ちなみに数十年前、ギャラリーモリタでは草間彌生さんの作品を20数万円で販売していたそうですが、今ではなんと6,000万円の値がついているのだとか。
これから①〜③のような視点を交えながら、「アートを所有する喜び」や「コレクターになる楽しみ」が伝わるような投稿をお届けできたらと思っています。
文化の秋③
美術館が所蔵する作品は、一体どこから来るのでしょうか?
大きく分けると、以下の2つが挙げられます。
・公的予算での購入
・作家・遺族、コレクターからの寄贈
それぞれの収集基準に沿って受入れが決まるのですが、
市立美術館(市美)は、 地域住民の生活やコミュニティ、独自の都市文化に密着した作品。
県立美術館(県美)は、その都道府県にゆかりのある作家(郷土作家・地元出身作品)。
といった特徴があり、こうした収集の方針は美術館によって様々です。
実際の展示キャプションをよく見ると、その作品がどうやって収蔵されたのかまで詳しく書かれていることもあります。
去年、豊田市美術館に行った際、ある作品に「株式会社バッファロー(社長様のお名前)」と書かれているのを見つけました。
福岡に戻ってすぐに森田さんに話したところ、「あの社長さんはアート好きとして業界でも有名なんだよ」と教えていただきました。 それ以来、バッファローのCMには芸能人ではなく、アーティストが多く起用されていることに気づき、とても感銘しました。
文化の秋④
【コレクター】
コレクターは、一つの作品でも複数点でもいい。
どうしてコレクターになったのか、そんなエピソードを伺いたくなります。
森田さんにどんな人が作品を買うのか聞いてみたことがあります。
好きなだけ買う方もいれば、作品の前に1時間でも立ち「後、半年で必ず用意するので待ってもらえますか?」という方もいるのだそう。
自分の好きを追求する人もいれば、所有者としての責任を重く受け止める人もいる。 前回投稿したバッファローの社長さんは、まさにシンプルに愛と責任を持った方なのだと思いました。
森田さんはしばしば「ARTは、後世に引き継がれるもの」とおっしゃいます。 僕はこの言葉をこう解釈しました。
ARTとは文化そのものであり、時代を映す鏡。個人の所有物でありながら、みんなで育てていかなければならないものなのだと。
「未来の草間彌生を買うのか?」という問いにも通じますが、本物のARTは簡単に価値が下がりません。 マネーゲームに踊らされることなく、文化として未来へ残そうとする作家・コレクター・ギャラリーの「一貫した美学と信頼関係」があるからこそ、その価値は支え守られていくのだと思います。
文化の秋⑤
【マネーゲーム】
アートが投機対象として扱われ、商品のように消費されていくことがあります。
価格が上がった下がったと、数字ばかりが一人歩きするように。
バスキアは、アート市場で「ストリート出身の異色な黒人天才アーティスト」というラベルを貼られ、白人富裕層たちの投資対象・消費対象にされていくことへの強烈な違和感と皮肉を作品に込め、それを世界に認めさせました。
森田さん曰く「本物のARTは値が下がらない。世界のマーケットで評価されることこそがARTの絶対条件である」と。
「未来の草間彌生を買うのか?」という問いにも通じますが、本物のARTはマネーゲームの波に簡単に飲まれません。一時の流行や価格変動に惑わされることなく、文化としての本質的な価値を見極め支え続けること。それこそが、作品を守り育てる作家・コレクター・ギャラリーに求められる「真の美学」なのだと思います。
文化の秋⑥
【九州派】
福岡市美術館のコレクション展示室には、九州派メンバーの作品が毎日のように展示されています。
1950〜60年代に福岡を中心に結成された「九州派」は、「反芸術」や「作品の商品化への反発」を掲げて活動していました。
そのため、最初から市場での売買を目的とせず制作された作品が多く存在します。
額縁に収まる絵画だけがアートではない。 彼らはアスファルトや廃材、労働現場の身近な素材を直接作品に取り入れ、「商品としてのアート」に対する強い抗議と熱量を表現しました。
当時は売買を否定する前衛精神から生まれた作品ですが、現在では日本の戦後美術史を語る上で欠かせない重要作品として位置づけられ、極めて高い文化的価値を持って美術館に大切に保存されています。
写真は、福岡市美術館に展示されている九州派のリーダー・桜井孝身さんの作品です。
文化の秋⑦
森田さんは、今年に入ってから「アートからARTへ」という言葉をよく口にされます。
それは、「日本のマーケットの中だけで完結するのか、それとも世界を目指すのか」という業界への強い問いかけです。
海外において、ARTは単なる鑑賞物にとどまらず、確固たる「資産」として取引されています。もちろん、そこには「未来の草間彌生を育てる」という大切な側面も含まれています。
世界で通用する日本の作家が、草間彌生だけでいいはずがない。 このまま世界を見ずに国内だけで満足していては、日本の美術界は衰退してしまうと、森田さんはそう危機感を募らせています。
森田さん曰く、ただの「アート」が世界に通用する「ART」になるためには、次の3つが揃うことが絶対条件なのだそうです。
①美術史的な評価
②世界トップギャラリーのバックアップ
③美術館の所蔵・バックアップ
この3つのピースが完璧に噛み合ったとき、作品は一時の流行を超え、時代を超える価値を持つ「ART」へと進化する。
文化の秋⑧
「この投稿シリーズを楽しみにしています」と言ってくださる方もいて、とても励みになっています。
ただのアート好きなコーヒー屋が書いた、本当かどうかもわからないような戯言にいつも貴重なお時間を割いてくださり、本当にありがとうございます。
「ちょっとアートを買ってみたいけれど、どこで買えばいいの?」と聞かれることも増えてきました。
そんな方にぴったりの、素晴らしいイベントが近々開催されます。
【ART FAIR ASIA FUKUOKA 2026】
会場:福岡国際センター
・10/2(金) 11:00 - 19:00
・10/3(土) 11:00 - 19:00
・10/4(日) 11:00 - 18:00
個別のギャラリーってどうしても敷居が高いですし、「勇気を出して入ってみたものの、店内には自分一人だけ…」なんていう気まずい体験もありません。
アートフェアなら、数多くのギャラリーや作品が一堂に会するため、自分のペースで自由に見て回ることができます。事前に公式HPで出展ギャラリーや作品をチェックすることもできますので、気になった方はぜひ覗いてみてください。
文化の秋⑨
【新しく買ってしまった】
九州派のリーダー・桜井孝身さんの作品です。
もちろん原画ではなく版画ですが、自分の手元に迎えることができました。
森田さんにお見せしたところ、「よく見つけたね!俺も欲しいくらいだよ」と笑っておられました。
正直、今は作品本体よりも額縁代の方が高いくらいです(笑)。 けれど、前回の投稿で書いたように、本物のアートは時代を超えて受け継がれていくもの。 皆様にもご覧いただき、大切に育てながら、この作品を通して誰かの未来をつくるきっかけになればと思っています。
文化の秋⑩
【マネーロンダリング】
今の時代、ARTを盗む人はいない。
なぜならその価値がわからないから。と森田さんは言う。
昔は、「あの作品は高いらしい」とプロの画商ではなく素人犯罪者が盗みに入ることもあったそう。
しかし、それを換金する人もその作品の価値がわからず値がつかずリスクが高いだけ。
そして、作品は溶かしたり加工したりできる宝飾品とはわけが違う。
シリアルナンバーや購入履歴で本来誰のもとにあるべきだと足がつくため現代でのマネーロンダリングは皆無なんだそう。
大巨匠の代表作として公式に発表・記録されているにもかかわらず、行方不明の作品は数多く存在する。
今はもう戦争で焼けてしまったかもしれないし、闇取引されているのかもしれないし、作品はどこかで眠っているのかもしれない。
ロマンと謎が残り続ける。
ダ・ヴィンチは誰に微笑む
文化の秋11
【シーズン2の締めくくりに】
今回のシーズン2では、
「アートが世界基準のARTになる瞬間」
「コレクターとしてどう世界と向き合うか」
といった少し深めの視点について書いてみました。
「ARTを買うことは決して難しいことではなく、こんなにも楽しいことなんだ」というワクワク感が、少しでも皆様に届いていれば嬉しいです。
また新しい知識をインプットし、自分の中にしっかりと落とし込めた時には、この場所で続きを綴りたいと思います。
これまでお付き合いいただき、どうもありがとうございました!
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